2011年6月9日木曜日

3.人麻呂と万葉集は、挽歌で何を傷んだのか?

巻二・挽歌(全巻の中で最初の「挽歌」の冒頭6首)で、人麻呂と万葉集は何を傷み、何を表現したのだろうか? 
  • 有馬皇子個人の死、あるいはその運命を傷んだ
  • 有馬皇子の策謀が功を奏した場合に、期待できたはずのことを傷んだ
この2つが傷みの対象だとは、なかかな理解しがたい。
  • 有馬皇子を例とする過去・現在の権力闘争全体の犠牲者一般を傷んだ
  • 繰り返される権力闘争への批判、争いと抑圧への反感、全体として平和と自由の欠如、これらを意識しないが、結果として表現した
  • 政変の度に、失われる(やまと)の精神遺産である歌や歴史などの諸文献を傷んだ
万葉集では「挽歌」の意味が積極的により広く解釈されていることから、人麻呂と万葉集が傷み、表現しようとしたのは、ここでは少なくともこのようなこと全体ではないかと理解したい。

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