4.万葉集の歌は、歌として完成した形を持っている
約4500首の万葉集の歌には、共通した特徴がある。
- 漢字による倭(やまと)言葉の音節表記(万葉がな)
- 五・七のリズム
- その他の諸特徴
- 長歌・短歌などの形式
- 公的(とくに権力と関係し、権力を正当化する)歌と私的な心情を歌った歌 ─ 後者は、意識はされていないが、権力に対する批判、権力よる抑圧への反感、争い(権力抗争・戦争)のない環境・平和への志向、自由に対するあこがれなどを結果として表現している
- 枕詞、序詞、掛詞、繰り返し、対立表現、単音節の音韻などの諸技法
これらの特徴は、以下のことをはっきりと示している。
- 万 葉集以前に、倭(やまと)に特徴的な民謡を主体とする歌の蓄積があった。 その重要な部分は始原的な漢字による音節表記によって、記録され、その過程で倭 (やまと)言葉の漢字による文字表記のルールが確立されてきた。 収集された歌や、文字表記のルールブックなどは、重なる権力抗争の中で失われてしまっ た。
- 人麻呂や万葉編纂者は、それらの歴史を知り、その記録にアクセスできた。 彼らは先人たちが残した精神文化の意味を知り、それを自分の、また全体の財産として命と同様に大切にしていた(だからこそ、歌の一定のレベルに達することができた)
- 万葉集が現代に残されているのは奇跡だと言われているが、その奇跡の背後には人麻呂や万葉編纂者たちの倭(やまと)の精神遺産を守る強い意志があった。
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